2013年1月25日金曜日

コミュニティと個の狭間で(釜石市復興住宅プロポーザル(小白浜地区)最終審査を経て)


 先日岩手県釜石市の唐丹地区小白浜(こじらはま)
町で復興住宅プロポーザルの最終審査が行われました。
最終5案に残り、そのプレゼンテーションの為に
行ってまいりました。詳しい公表などはこちら(かなり下の方)に掲載されていますhttp://www.city.kamaishi.iwate.jp/index.cfm/12,22371,31,164,html
わたしたちコンテンポラリーズの案は商店街と
連続する通りに対してできるだけ地域と住民に開かれたコミュニティを再生するために「屋根」をひとつのテーマにまち全体に繋がるような構成を提案しました。結果は残念ながら落選。5社ともとても熱がこもっているいい案でした。僕としてはおそらく本当にどれがとってもそれなりに納得できるものでした。しかしながら最も大きな違いは何か。今回上位2点と下位3点というように実は大きく分かれています。これは何か。上位2点の案は海側に対して住戸が開いており、下位3点は何かしらコミュニティを誘発させるものが住戸間、もしくは住戸の前に設えてあります。サルハウスの案がおそらくこの5案の中で最も中立であったかと僕には思えます。
つまり個々の生活の充実の上に成立するコミュニティというものがこの小さな町ではリアリティであってコミュニティを充実させることが個々を元気づけるわけではなかった、という風に理解しました。1等案はその辺をとてもうまく解いているように思えました。2等案も地元の地形やコンテクストを読み解きながら穏やかではありながらいろいろチャレンジングな試みをトライしていました。僕たちは小さなまちだからこそ集合することでしか出来ない空間というものがあるだろう、というスタンスでトライしましたが審査員が想像していたものとは異なるあり方を提示してしまった、というのがこのような結果に結びついたんだと思います。反省しきりですが、今後おそらく復興住宅プロポーザルは益々困難になっていく気が同時にしました。審査員の一人、東北大学の小野田さんは「屋根の記号化」つまり復興住宅=屋根形という図式が定着してしまうと本来の住民の暮らし方やコミュニティのあり方よりもそちらの構成が重要なようにとられては困る、ということも話されていました。しかしそのこと以上に僕はどこまで地元の人たちの気持ちに近づくことができるだろうか、という問いに対する答えがこうしたプロポーザルの結果であってほしいと願うのです。釜石では山一つ越えると生活が変わるように、まち単位で住民の気持ちや暮らしが異なるので設計者として本当に入念に調べ上げるか、すべての想像力を駆使してその気持ちになりきれるかがその「気持ちに届く」案かどうかの分かれ目になると思います。その両方が精密に求められていくことで益々厳しい条件になっていくと伊東委員長や小野田さんの講評を聞きながらひしと感じました。これは結構しんどい。しかしこの写真のように2年近くたっても自然の猛威が視覚的にさらけ出された中で毎日を生き抜いている釜石(小白浜)の人たちの営みを目の前にするとまったく愚痴っている場合ではなく、すぐに次の復興事業に関わらなくては、とも思うのです。一等になられたMa設計事務所の水上さんが最後に「ずっと復興事業に関わりたいと思って第一回目もチャレンジし、こんなに早くその機会をいただけたことをうれしく思います」と感想を述べていました。おそらく今回提案した人たち全員の気持ちを代弁した言葉であったように思えます。また機会があれば何度でもチャレンジしたいと思います。                 (潤)
 
 
 
 

3 件のコメント:

  1. 柳沢さま、
    水上です。会場では緊張して思ったことの半分も言えませんでしたが、復興に関わってなにかしらより幸せな未来の東北の力になりたいと言う気持ちは貴殿が考える通り、多くの建築家が共有するものだと思います。
    その気持ちの代表として今回の機会を与えられたのだと、その想いを共有する多くの建築家の顔に泥を塗ることの無いように気を引き締めて参りたいと思います。
    有難うございました。
    水上健二/Ma設計事務所

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    1. 水上さん、こんにちは、こちらこそほとんど当日はお話しできず残念でした。水上さん、山下さんが我々の代表です(笑)是非みなの思いを現地の人たちとともに共有していただければ我々応募したものだけでなく東北地方に思いをはせて普段しぶとく関東関西で仕事をしている有志を勇気づけることになると信じています。いつか今回のメンバーで集まれるといいですね。時間も予算もなく厳しい現場であるに違いないと思いますが、どうか身体だけは気をつけてやりぬいてください。
      水上さんたちの全面パースがよかったなあ。

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  2. 柳沢さま、
    水上です。会場では緊張して思ったことの半分も言えませんでしたが、復興に関わってなにかしらより幸せな未来の東北の力になりたいと言う気持ちは貴殿が考える通り、多くの建築家が共有するものだと思います。
    その気持ちの代表として今回の機会を与えられたのだと、その想いを共有する多くの建築家の顔に泥を塗ることの無いように気を引き締めて参りたいと思います。
    有難うございました。
    水上健二/Ma設計事務所

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